【ラブライブ! サンシャイン!! The School Idol Movie Over the Rainbow】感想

ラブライブ!サンシャイン!!劇場版の円盤がついに発売となりました。敬虔なるラブライバーであれば週変わりする特典を手に入れるために足しげく映画館に足を運ぶところでしょうが、私の家庭ではそれは許されざる行為。上映期間中、どうにか1度だけ観に行く事が出来たのでした。

何度でも観たいと思っていたので円盤の発売日を心待ちにしていた私。しかし発売日になっても予約していたアマゾンからは発送メールもなく、結局3日遅れでの着弾となりましたが、その遅れを取り戻すかのように今のところ1日1回のペースで観ています。

それくらいのペースで何か1つでも良いことができれば、世界はもっと美しくなるのかもしれない・・・(一日一善)

などと荒唐無稽な妄想はさておき、早速、感想記事を始めてまいりましょう。

尚、ネタバレ要素もございますので、「まだ知りたくないよ」と言う方は閲覧には十分ご注意ください。

 

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私の率直な感想といたしましては、やっぱりこの映画、良いです。家で何度かじっくりと観ましたが、見終わった後はいつも初めて映画館で観た時の清々しい感動が胸を包んでくれます。

でも改めて言っておきたい。私はラブライブ!が好きだし、Aqours(アクア)のファンなので確実に贔屓が入っているでしょう。これは否定できません。

作品のシナリオや脚本から、テレビアニメでどんなことがあったのか、初見さんにもどうにか伝わるような構成にはなっていますが、それでもやはり、テレビアニメを見ていない人にはあまりオススメできない内容でしょう。ですのでもし興味がございましたら、テレビアニメ版を前話観てからのご視聴を強くオススメ致します。と言うのも、ラブライブ!サンシャイン!!の主人公たちが結成したスクールアイドルAqoursの活動は初めから波乱に満ちたものでしたし、足掻いて足搔いて、それでも大目標である高校の統廃合を阻止する事が出来なかったという経緯があります。その辺りのお話をしっかり押さえておくことで、彼女たちの1つ1つの言葉や表情に含蓄されている意味を咀嚼する事が出来るからです。

彼女たちはいつも悩み、それでも前に向かって進んでいきます。そんな姿に私は感動を覚えるのです。

映画は3年生組が卒業してAqoursが6人となったところから始まります。Aqoursはメンバーが減ったことで圧倒的に表現力が低下してしまいました。そしていつも支えてくれていた存在の大きさに気付き、不安に押しつぶされそうになります。これからのAqoursはどうすれば良いのか、その答えを探す物語です。

 

 

圧巻のライブシーン しっかりとエンタメ作品している!

ラブライブシリーズの最大の見所は、何と言ってもライブシーンではないでしょうか。テレビアニメ版でもOP、EDは勿論のこと、作中でも数々の歌が歌われ、そのダンスは実に精巧に描写されていました。今作は劇場版と言うこともあって、テレビアニメ版を上回る作画クオリティ。ぬるぬる動く。表情もころころ変わる。

Aqoursのメンバーが元気に歌っている姿を見れるだけでも、この映画に価値を見出す事が出来ると思います。

曲数も多いですし、プロローグで歌われた「僕らの走ってきた道は・・・」に至ってはフルバージョンでずっとダンスシーンが続くわけです。これは本当に凄い。

それから、ライブの多くはサンシャインの舞台となっている沼津で行われるのですが、時には華やかなイタリアに舞台を移したりします。その目新しさもエンタメ要素を押し上げます。

加えてAqoursの良き相談相手でありライバルのSaint Snowもライブを披露。キレッキレのダンスにパンチの効いた鹿角姉妹の掛け合いが凄く良かった。映画館で観た後、1番印象に残っていたライブシーンはSaint Snowのそれだった事は、ここだけの秘密にしておこう。

「卒業」と向き合う

この劇場版【ラブライブ! サンシャイン!! The School Idol Movie Over the Rainbow】にテーマを見出すなら、それは「卒業」だろう。

3年生の実質的な卒業は言うまでもないですが、残されたメンバーも卒業しなければいけないものがあった。それは9人のAqours。

3年生が卒業してもAqoursを続けていくことを選択した6人ですが、3人の存在感は、彼女たちが思っていたよりも大きかったようです。3年生がいなくなったことでパフォーマンスの質も下がり、戸惑いで地に足がついていない6人は、まるで今までのことが全て波にさらわれて、なくなってしまった(ゼロになってしまった)かのような不安に駆られます。それでもスクールアイドルを続けると約束したし、目の前にはAqoursにしか解決できない問題も横たわっています。6人が新たな一歩を踏み出す為には、9人だった頃のAqoursからの、精神面での卒業が必要でした。

また、Saint Snow鹿角理亞にしても同じで、コンビを組んでいた姉、聖良も高校を卒業。Saint Snowは解散となりましたが、理亞は前回のラブライブ予選での失敗を引きずっています。予選落ちした時、普段は気丈に振る舞っている聖良が流した涙。理亞はその涙が脳裏から離れず、新たに始めたスクールアイドルにもSaint Snowの面影を求めてしまうのでした。彼女もまた、卒業できない1人なのです。

もっと向こうへ 虹の先へ

サブタイトルにもなっている「Over the Rainbow」。

千歌たちが廃校となる裏の星女学院の校舎に描いた、9色の虹を覚えていますか。

9色は勿論、各メンバーを象徴した色で、それが円弧状に積み重なって描かれた虹には彼女たちの様々な想いが詰まっていることでしょう。

浦女で出会い、たくさん練習をして、一緒に笑って一緒に泣いた。廃校を止めることはできなかったけれど、ラブライブで優勝することが出来た。

あの虹は9人で作ったAqoursそのものなのですね。

ライブライブ優勝という快挙を果たしたAqoursは確かに輝いていましたが、千歌たちは新しいAqoursを模索します。

メンバーは変わるけれど、積み上げてきた物が失われることはなく、ゼロになったりはしない。ずっと1人1人の胸に刻まれ続ける。ずっと一緒にいる。そのことに気づいたメンバーは、少しずつ前を向けるようになったのです。

そして、未だ立ち止まっている理亞にも前を向いて欲しいと手を差し伸べます。

Saint Snowはラブライブ優勝候補とも言われていた実力派スクールアイドルですが、理亞の失敗で予選落ちしてしまいました。姉の聖良とラブライブに出場できる最後の大会だっただけに、理亞はその責任の重さと後悔に今にも押しつぶされそうです。そこで行われる事となった疑似ラブライブ勝戦。Aqoursと決勝の舞台で対決することを想定していたSaint Snowの2人は、この2組だけのラブライブによって、Saint Snowの活動に1つの区切りをつけた。そして理亞はやっと、Saint Snowを卒業することが出来たのです。

最後に

新しいAqoursのステージの前に、9人で浦女に行くシーンがとても印象的でした。学校の門が開いていていることに気付いた9人でしたが、千歌はそっと、その門を閉めます。きっと少し前の彼女たちなら、学校や9人だった頃のAqoursを懐かしんで、校舎に足を踏み入れていたのではないでしょうか。でもそうしなかったのは、彼女たちが大切なものに気付いて少しだけ大きくなったから。

そんな成長が顕著に伺えたのがルビィ。あんなに引っ込み思案でお姉ちゃんの陰に隠れていたルビィが壇上で堂々とスピーチをしているのです。3年生の卒業を機に、一番、成長できたのは彼女かもしれませんね。

それから、この劇場版を見て印象が変わったのがヨハネこと善子。3年生が別行動しがちな今作では、どうしてもパワー不足になってしまうところが多い。そんなとき絶妙にボケ、いじられることでシーンに抑揚が生まれました。正直、テレビアニメ版を見ている限りではちょっとよくわからない横槍いれすぎかなと思ってましたが、今作ではそのパワーが良い方向に向かったと思います。

 

どうしてもμ’sと比較されてしまうAqoursの物語は、根本的な方向性の違いから作品の持つテンションに大きな差がありました。μ’sは自分たちが信じることを面白おかしく楽しみながらやっていたら、最高の結果がついてきたといった印象ですが、対してAqoursは悩んでくじけて、それでも前に進むことを選び続けた。だからこそ彼女たちは大きく成長することができたのでしょう。

きっと彼女たちはこの先も、変化を受け入れながらも、輝き続けることでしょう。