【ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風】感想
こんにちは。
ジョジョの奇妙な冒険、大好きっこのナバッキオ(40)です。
このナバッキオと言うペンネームも、今作に登場するレオーネ・アバッキオに、私のイニシャルの「n」を足してナバッキオと名乗らせてもらっています。
アバッキオめちゃくちゃ格好良いんですよ。男の私でも惚れてしまいます。
このジョジョの奇妙な冒険シリーズだけは漫画を全て買い揃えていまして、大切に保管しています。他の漫画はけっこう売ってしまうのですが、これだけは手放せません。
さて、今回TVアニメ化したのは第5部「黄金の風」です。
パート分けされ、各パートごとに主人公が変わるジョジョの奇妙な冒険の中において、私が1番好きなパートです。
そんな作品が映像化すると聞いた時は、本当に胸が躍りました。
そして始まったアニメは、過去にアニメ化した1部から4部までのクオリティを作画、演出面共に遥かに凌駕していました。往年のジョジョファンは皆、歓喜にその身を捩ったことでしょう。
それでは全39話を視聴した感想をまとめていきましょう。
以下、ネタバレがありますので、気になる方はブラウザバックお願いします。
あらすじ
第5部の主人公はジョースター家の因縁の敵、ディオ・ブランドーの息子であるジョルノ・ジョバァーナ。
彼がネアポリスの空港で無許可タクシーのアルバイトをしていると、「涙目のルカ」がやってきました。ルカはイタリア全体に影響力を持つ犯罪組織「パッショーネ」の一員で、空港での「商売」を取り仕切っている人物です。
ここでアルバイトしてるのに上納金を貰っていないと因縁をつけてくるルカを、不可抗力とは言えスタンド能力で殺害してしまったことで、ジョルノの運命は急速に回り始めました。
「涙目のルカ」」が殺され、パッショーネでは犯人探しが始まりました。ジョルノのもとにやって来た男は、ネアポリスで末端チームを率いているブローノ・ブチャラティ。
ブチャラティにルカを殺した犯人であると見破られたジョルノは、彼と生死を掛けた戦いになりました。
しかし戦いの末、2人は組織のボスを倒し、組織の浄化を図るという目的のもとに、手を組むことになったのです。
ブチャラティの協力で組織の幹部、ポルポとの面談を取り付けたジョルノは入団テストに合格して組織の一員となりましたが、その際、ジョルノは幹部のポルポを自殺に見せかけて殺害しました。
幹部ポルポの死亡によって幹部の座が空きました。ボスへと近づくため、ブチャラティはポルポの隠し財産を利用してそのポストに就きましたが、即座にボス直々の命令を受けたのです。
それは、ボスの娘「トリッシュ・ウナ」の護衛。
組織の裏切り者がボスの秘密に近づくためにトリッシュを血眼になって探しています。
敵は全てスタンド使い。
こうして裏切り者たち同士の壮絶な戦いが始まったのでした。
ジョルノとブチャラティ 組織に抗うその原動力とは
ジョルノとブチャラティの2人は戦いの末に、組織の浄化のために手を組むことを決断しましたが、その理由は何だったのでしょうか。
それを紐解くには、2人の生い立ちにまで遡る必要があります。生い立ちを整理し、2人の利害関係を見ていきましょう。
ジョルノ・ジョバァーナの生い立ち
ジョルノ・ジョバァーナは父ディオ・ブランドーと日本人女性の間に生まれました。幼少期は日本に住んでいて本名は「汐華初流乃(しおばなはるの)」といいます。
ジョルノの母親は生後1,2歳のジョルノを1人残して夜の街で遊ぶような母親失格の女でした。そんな母親がイタリア人男性と再婚してジョルノはイタリアに移り住みます。
イタリアに移ったジョルノは日本人だからと同年代の子供からは虐められ、新しい父親からは虐待を受け、いつしか人の目ばかりを気にするような少年になっていったのです。
そんな時、ギャングの抗争で負傷した1人の男を助けました。
それからです、いつも虐めていた悪ガキが優しくなり、父親が暴力を振るわなくなりました。気が付くと、路地の陰からあのとき助けた男がジョルノを見守っているのです。
男はギャングですが紳士的で、それでいてジョルノを1人の人間として対等に接してくれる姿に、ジョルノは感銘を受けました。
奇妙な話ですが、本来ならば親が教えるべき愛情であるとか、人を信じる心をジョルノはギャングから教えられたのです。
その出会い以来、ジョルノはギャングの世界に憧れを抱き、ギャングスターを目指し始めたのです。
ブローノ・ブチャラティの生い立ち
ブチャラティはネアポリス郊外の漁師の家の生まれです。父親は人づきあいが下手だけど家族を愛し、懸命に働いていました。
しかし、両親は離婚。両親は父親か母親か、どちらに着いて行くかをブチャラティに選択させることにし、彼は父親と生きていくことを選びました。母親はどこに行っても生きていける。しかし、父親を1人にすることは、ブチャラティにはできなかったのです。
ある日、釣り客を乗せて離島に向かった父親が、銃弾を受けて海を漂っているところを沿岸の警備隊が発見しました。
病院に緊急搬送されて命は助かりましたが、父親はどうやら麻薬の取引の現場を見てしまい、巻き込まれたとのことでした。
ある日の夜、あの時の男たちが、父親の病室に忍び込んできました。目撃者をきっちりと始末するためです。
ブチャラティはそれを予想していました。ベッドの下から飛び出して、2人の男を殺害しましたが、その報復はいつまでも続くでしょう。警察も当てにはなりません。
父親を守ると決めたブチャラティは、組織の門を叩きました。忠誠と奉仕とを引き換えに、父親の身の安全を保障してもらったのですが、数年後に後遺症を残したまま死亡しました。
ギャングとして働く中、同業のギャングの1人が見覚えのある粉の入った袋を持っているのを見付け、組織が麻薬の密売に手を出していたことに気付いたのです。麻薬は組織内では禁じ手とされていましたが、父親が撃たれるきっかけとなったあの取引も、組織が関わっていたのでした。
利害は一致 ブチャラティがジョルノの夢に掛ける訳
ブチャラティは父親を殺し、自分の人生を狂わせた麻薬を憎み、それを蔓延させている組織のボスをも憎んでいます。
そして最近、街では若者にまで麻薬の魔の手が伸びていました。街の老婦人の孫も麻薬に染まり、乱暴をするとブチャラティに相談を持ち掛けます。この街はどうなっちまうのか。ブチャラティは私たちを守ってくれるんだよねと詰め寄られるのですが、その麻薬を広めているのはブチャラティが所属する組織なのです。
そこに矛盾を感じつつも、何もできない自分を嫌悪するブチャラティ。組織に飼われ、このまま何もしないでゆっくり死んでいくだけの自分に苛立ち、無力に絶望していたことでしょう。
しかしそこに、風のように現れた青年が、この街を陰で牛耳っている組織のボスを倒し、ギャングスターに昇り詰めると言うのです。
ボスの正体は、幹部クラスですら知らされていません。もし正体を探っていると知れ渡れば、必ず殺されるでしょう。
しかし、ジョルノの不思議な魅力に感化され、ブチャラティはボスを討つ覚悟を決めたのです。
ディアボロとキングクリムゾンの能力
組織の頂点に君臨するボス、ディアボロは非常に冷酷な人物です。組織に反抗する者、自分を詮索する者は容赦なく始末しますし、ギャングの世界では禁じ手とされていた麻薬の密売に手を出した挙句、その販路は子供たちにまで及びます。
また、非常に冷静で用心深さも併せ持っており、組織でもその正体を知るものは誰一人としていません。命令は特定の幹部を通して下り、その幹部ですら、ボスの正体を知る者はいないでしょう。
幼いころから偽名を使うほどの用心深さで、自分の正体へと繋がるであろう過去も全て消し去ってきたディアボロでしたが、トリッシュの存在が急浮上しました。
ディアボロは幹部のポルポにトリッシュの護衛を命令します。トリッシュが裏切り者の手に渡れば、自分の正体を暴かれる可能性があったからですね。
ポルポの後釜に収まったブチャラティに、幹部のペリーコロを通じてトリッシュを預けたディアボロは、ブチャラティにトリッシュをサン・ジョルジョ・マッジョーレ島の教会に連れてくるように指令を出しました。
その目的は、後になって湧き出てきた過去を消し去るために、自らの手で、確実にトリッシュを始末することでした。
自分の利益の為であれば他人であれ肉親であれ、容赦なく不幸に出来る。それがディアボロなのです。
ディアボロのスタンド「キングクリムゾン」は、そんな彼を象徴するかのような能力と言えます。
未来を予知して、その予知した時間を消し飛ばすことが出来きるの能力は、自分に不都合なことが起こるはずだった運命さえも消し飛ばして最良の結果だけを得ることが出来る。正に帝王に相応しい無敵の能力です。
ディアボロは完全なる邪悪な存在です。抗争相手がいれば排除し、麻薬を捌いて沢山の人を依存させ、産みの親は殺し、育ての親である神父にも手をかけた。そして今度は実の娘であるトリッシュを抹殺しようとまでしている。
それも全て、結果を求めるが故の犠牲です。自分が帝王となり常に絶頂であり続ける。その結果の為には何だって利用するし、どんな障害も、邪魔者も消し飛ばすがごとく排除する。
ジョジョの奇妙な冒険に登場するボスキャラは揃って悪だけれど、その中でもディアボロは群を抜いた悪だと思います。
眠れる奴隷
ブチャラティの死の運命はジョルノに出会う前から既に決定づけられていました。彫刻家スコリッピのスタンド「ローリング・ストーンズ」の能力で、ブチャラティは近い将来、死を迎えることが予告されています。
ローリング・ストーンズは丸形の石のスタンドで、近い将来に死の運命を迎える人間に接触することで、その人に実際に起こるであろう死よりも安楽な死を与える力を持っています。ローリング・ストーンズはブチャラティに安楽な死を与えようと動きますが、仲間の働きによって崩され、追跡をとめました。
これでブチャラティの死の運命が変更された訳ではなく、あくまでも本来の運命の道を進むこととなったのですが、ローリング・ストーンズの崩れた砂には新たにアバッキオとナランチャの姿も浮かび上がったのでした。
これはブチャラティが運命に立ち向かうことで、2人も死の運命を辿ることが決定したことを示していて、もしこの時にブチャラティが石を受け入れていたならば、2人の運命は大きく変わっていたことになるんですね。人の運命とは何か途方もない力によってコントロールされ、まるで奴隷のように動かされている。スコリッピの「運命の奴隷」という言葉は、そう解釈することができます。
サン・ジョルジョ・マッジョーレ島の教会でディアボロから致命傷を受けたブチャラティは、自分が既に死んでいることを受け入れ、生命の軌跡が続くうちに魂を燃やすことを決断しました。麻薬を蔓延させて父や自分の人生を狂わし、今、実の娘にまで手を掛けた男を倒す。それはブチャラティの信じる正しい行動であり正義でした。定められた運命ならば、正義のために抗う過程を選んだのです。
ですが1人だけ、運命を操れる男がいます。それがディアボロです。
ディアボロのキングクリムゾンの能力は全ての過程を消し飛ばして運命を変えることができます。結果こそが全てに勝って価値のあるものだというディアボロの観念をそのまま具現化したようなスタンドです。
ここに考え方の対比があり、また、アバッキオが死後の夢の中で出会った同僚の警官も結果だけにとらわれずに、真実に向かう意志こそが大切なのだと言い残しています。
ブチャラティ達の残してくれた過程のおかげで、ジョルノはディアボロを倒すことが出来ました。
彼らは「眠れる奴隷」だったのです。運命の奴隷が、ただ運命を受け入れるだけの奴隷ならば、眠れる奴隷は目を覚まし、運命に抗う強い意志を持った奴隷と言えるでしょう。
まとめ
ジョジョの奇妙な冒険と言えば刻一刻と戦況の変わるバトルシーンが最大の魅力。中でもこの第5部はシリーズ随一の激しい戦闘が繰り広げられます。
敵もパッショーネが抱える暗殺チームですので能力がえげつないし、彼らも彼らなりの正義と信念をもって戦いを挑んでくるので凄まじい気迫なのです。
整理してみると、ブチャラティチームも暗殺チームも動機は違えどボスを倒すという目的は同じだったんですよね。両チームが分かり合えることはなかったとしても、とても皮肉な構図が出来上がっていたわけで、数奇な運命を感じずにはいられません。
そしてこの第5部においては、人間だれしもが心に留めておくべきメッセージが込められていて、その信念をもとに行動する主人公たちがとにかく格好よく、私の胸を熱くするのです。
人生において、自分が試される場面は幾つもあると思います。その時、確かに結果はとても重要ではあるけれども、その結果にいたるまでの過程をしっかりと踏んでいけば、いつかは思い描いた結果にたどり着けるかもしれない。もしそうならなかったとしても、納得することは出来るかもしれない。
ジョルノやブチャラティたちの行動は、私たちにそんなメッセージを送ってくれている。そう私は感じるのです。